遠くが見えない(近視)場合の治療(近視進行抑制治療)

近視とはどういう状態なの?
近視は、近くの物はちゃんと見えますが、遠くの物がぼやけて見える状態のことを言います。原因としては、眼球が前後方向へ伸びる(眼軸が伸びる)ことにより角膜と水晶体の屈折がズレてしまい、網膜よりも手前で焦点を結んでしまうことによりぼやけて見えてしまいます。
近視の強さの分類
近視の強さは、1.0とか0.7などと表される裸眼視力ではなく屈折度数により分類されます。屈折度数の単位は“D”(ディオプトリー)で表されます。裸眼視力と屈折度数は個人差が大きいため、裸眼視力=屈折度数とはなりません。眼科できちんと計測して現在の屈折度数を知っておく必要があります。
・弱度近視・・・・-0.5D以上-3.0D未満
・中等度近視・・・-3.0D以上-6.0D未満
・強度近視・・・・-6.0D以上
子どもの近視増加が世界的にも問題視されています。
近視は遺伝と環境の両方が関与して生じます。どちらの要因が原因で近視を生じてしまうかは判別することができませんが、遺伝要因は両親や祖父母などから受け継いでしまうもので、環境要因は外遊び(日光にあたる、体を動かす)の減少やスマートフォンやタブレットなどの画面を近距離で長時間見ることにより生じやすくなると考えられています。国内では文部科学省発表の2025年度学校保健統計調査で、裸眼視力1.0未満の割合は小学生36.07%、中学生59.35%、高校生71.51%となっており10年前と比較しても5%~8%ほど上昇しています。
近視ってメガネやコンタクトレンズで視力を矯正できるから、そんなに重く考えなくても大丈夫?
近視は軽度であっても緑内障や網膜剥離、近視性黄斑症など重大な病気に罹るリスクを増加させてしまいます。これは上図のように眼軸が前後方向に伸びることにより、網膜や脈絡膜も引き伸ばされ様々な影響が出ることがあるためです。一度伸びてしまった眼軸は戻ることはありません。視力はメガネなどで矯正できるので日常生活には問題ありませんが、将来のために早く治療を開始することで重大な病気に罹るリスクを軽減することができるのです。
近視を進行させないために早期発見!早期治療!が重要です。
近視が生じてしまうと個人差はありますが、身体の成長とともに眼軸長も伸びてしまい、年齢とともに急激に進行してしまうことがあります。そこで近年期待されているのは近視進行抑制治療で、近視が進行しやすい年齢の間に適切な治療をして進行を遅らせ、将来罹る可能性のある眼領域の病気に対するリスクを減らすのが目的です。
近視治療の時期
近視の進行を抑えるための近視進行抑制治療は、6歳頃から18歳頃(症状によっては20歳程度)までの期間に治療することが有効であるといわれています。だいぶ幅広い範囲になりますが、身長の伸びが眼球の成長にも関係していると考えられているため、おおよそ身長の伸びが止まるくらいまでが治療期間となることが多いです。どのような状態になったら治療を開始すべきかですが、軽度近視であれば➀ご両親のどちらかが強度の近視、➁短期間で裸眼視力が大きく下がっている、③短期間に屈折度数が進んでいる、➃眼軸長の伸びが年齢平均以上に伸びている、などを基準に開始します。中程度近視以上であればすぐに始めたほうが良いと考えます。
治療方法
(Ⅰ)現在、当院では2種類の近視進行抑制治療を行っています。ここではごく簡単に説明します。
進行してしまった近視は戻すことはできませんが、治療を行うことにより進行を遅らせることが目的となります。近視進行抑制治療は自費診療となっております。メリット・デメリットや適用範囲、料金等についてはホームページまたは診察時にご確認ください。
・低濃度アトロピン点眼液「リジュセアミニ」
就寝前に1回1滴を点眼する治療法です。2024年12月に厚生労働省から製造販売承認をうけた医薬品で、発売前の5歳~15歳の近視患者対象の臨床試験では点眼を行なわなかった場合と比較して、小児の屈折値の進行や眼軸長の伸びを抑制することが確認されています。また、2026年6月からは診察や検査料が保険適用になることが予定されています。(点眼薬については従来と同じく全額自己負担です。)
・オルソケラトロジー
就寝中に装用する「ハードコンタクトレンズ」です。レンズの内側に特殊な加工がされているもので、寝ている間に角膜の形を矯正することで視力を出し、日中は裸眼で過ごせる治療法です。就寝中に装用することで、日中はメガネなどを装用しなくてもよいのですが、扱い方が難しいため細やかなレンズ管理が必要となります。
(Ⅱ)近視進行抑制のために、日々の生活の中で取り組んでいただきたい事を紹介しておきます。前述した環境要因を改善する目的で、➀お日様の下での外遊びや運動を積極的に行ってください。②スマートフォンやタブレットなどを近距離で長時間連続して使用するのではなく、こまめな休憩と端末からの距離を意識しながら使用するようにしてください。米国眼科学会議が推奨しているもので「20-20-20ルール」と呼ばれるものがあります。具体的な方法は、「連続して20分端末の画像などを見たら20フィート(約6m)離れたところを20秒間眺める」というものです。遠くを見ることにより目の筋肉をリラックスさせ、瞬きが増えることにより目が潤いドライアイの予防にもなります。➂最低でも寝る1時間前にはスマートフォンやタブレットの画面を見ないようにしましょう。入眠時についつい見てしまうことも多いSNSなどですが、画面から発せられるブルーライトにより脳が昼間と認識してしまします。このことにより睡眠と覚醒を整える役割を持つメラトニンの分泌が抑制され、「なかなか寝付けない」や「眠りが浅い」といった睡眠トラブルにつながりやすくなります。(Ⅱ)については、近視でないお子さんも大人も、日々にケアを取り入れることによって、病気のリスクを軽減できるでしょう。
おわりに
これだけ便利な世の中になり、生活環境が変化してゆく中で眼への負担は計り知れません。もしかしたら近い将来、全員がスマートグラス(メガネ型のデジタルデバイス)を付けて生活するなんてことが当たり前になるかもしれません。視力の矯正はできるかもしれませんが、視界が消えるということが起こると現状では治療の方法がありません。どうか健康なうちにいたわってあげて、進行しないように心がけてください。
